インタビュー #01 ジュエリーデザイナー 平 結さん<心地のいい暮らし>

エソラニがおすすめするアーティストへのインタビューコラム。記念すべき第一回はジュエリーブランドRyui(リュイ)のデザイナー 平 結(たいら ゆい)さんに「心地のよい暮らし」についてお伺いします。

都会にほど近い豊かな自然に囲まれた場所でご家族と猫と共に暮らす平さん。日常の当たり前を大切に自然に寄り添って生きる暮らしは、繊細で美しいジュエリー作品のアイデアの源泉でもあり、私たちへの生き方へのヒントがいっぱい詰まっています。

 

心地のいい暮らし

Yui Taira /平 結:和歌山県生まれ。武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科卒業。パッケージデザイナーとして活 躍していた中、いつまでも大切にされるものを作りたいという想いから、2008 年より、夫である日向 龍とジュエリーブランド【Ryui / リュイ】をスタート。

 

都会と自然の間で「楽しい」を追求する

ー今日は以前から訪れてみたかった平さんのご自宅に伺えてとても嬉しいです。このご自宅のある場所は利便性が高いのにとても自然が美しい所ですね。

私は自然はもちろん好きですが、同じくらい都会も好きなんです。その点でここはすごくバランスがいい場所だと思っています。ジュエリーをつけてお洒落をして街に出るのも好きだし、作業着を着て畑を耕したり虫を取るのも好きなので、それが両立しているような場所を探し続けてここを見つけたんですよ。

 窓の広い家

 

ーお家もとても素敵です。広い窓からの森の景色に癒されますし、薪ストーブのある暮らしやインテリアなど、平さんらしさが溢れていますね。ご自宅と暮らしを心地よくデザインしていく上で工夫されたことはありますか?

そうですね。とにかく時間が足りない時は頼れるものに頼っています。以前は苦手なことも努力してできるようになろうと試みた時期もあったんですけど、大人になってから得意なこととできないことが極端に分かれているんだということに気づいたんですよね。普通の人ができることをできるようになるまで普通の人の何倍もかかったり……

例えばこの家も気密性や空調にこだわって作ってもらったので、寒い時期でも太陽の熱を取り入れたり、薪ストーブに火を灯せばそれだけで家中がずっと暖かいんです。ただ時間がない時は灯油ストーブだって使いますし薪は買ったりもします。食器を洗う時は食洗機にも 頼っています。日常のことなので、あまりにもストイックで過酷だったり必死だったりしたらつまらなくなってしまう。もちろん徹底して暮らしに集中することも余裕があれば楽しそうだなと思うんですけど、今の子育てや仕事との両立を考えると、できないことは割り切っていますね。

努力しなきゃいけなかったり、たくさん時間をかけたのにほとんど進まなかったり……”苦手なことに時間を費やしすぎると、本当にやりたいことに十分な時間を使えない” ということに気づいてからは、できるだけ人やものに頼るようになりました。自分にとって「楽しい」ということをできるだけ追求できるような暮らし方をしないと勿体無いなと思って。

心地のいい暮らし薪ストーブは暖いだけじゃなく炎を眺めるのもとても楽しいですよ 

 

 

 

難しいことはしない。大切なことを意識する

ー自分のできることできないことを見極めて効率的に生きるというのはヒントになりますね。限られた人生の中でどれだけ自分のやりたいことに時間を持てるか。ちなみに平さんは料理がお好きだと思うんですけど、料理や食についてはいかがですか?

料理は好きなんですけど、特別凝ったことはしていないんです。普段はシンプルで時間をかけない料理ばかり。 例えばきゅうりを切って、塩でもんでオイルをかけて終わりとかね。でも出汁は出来るだけきちんと取るようにしたり、できるだけ大切に育てられた食材を取るとか、料理によって数種の塩やオイルを使い分けるとか、そういう風にこだわっていたりはします。そして作る時は一気に料理して作り置きをしておく。

もちろん時間があれば凝った料理を作るのも好きなんですけど、今はちょっと難しいかな。ただ人は食べ物でしか作られていないんだなと考えると、その日に何を食べるか、つまり「なにで自分の体が出来上がっていると理想的か」と考えるのは大事だなと思うようになりました。外で売っているものももちろん食べるんですけど、できるだけ自然な食べ物を取り入れたい。すごく料理は簡単でも自分の畑でとったものをシンプルに 食べるとか、できる限りでそういうことを心掛けてますね。

ちなみに最近忙しいこともあって玄米食に変えたんですけど、それも色々調べてみると味噌と玄米さえ食べていれば最低限なんとかなるなと……ここでも納得したものにはちゃんと頼って。炊くのに少し手間は増えても美味しいですし、あれこれたくさん作らなくても栄養が取れるので、結果的に時短になるなと考えて。そんなふうにとても単純で、決して難しいことをしているわけではないんです。なにを食べているか分かっていて食べるのと、分からないで食べるのは違う。そういう意識を大切にしています。

 センスのあるご飯お手製の昼食を手際よく振る舞ってくれた平さん。近所の農家さんが作った切り干し大根や目の前の菜園で採れた落花生や玄米など。シンプルな料理はとても美味しい。 

 

ーお家の目の前は森になっていて、その中に平さんの作った畑もありますね。

畑も細かく計画的にやっているのではなく、植えたいものを植えてうまく育ってくれたらそれを食べる。あまり手間暇かけられていないのが現状なので、小さな野菜しかできないことも多いんですが(笑)

今は落花生やコールラビ、玉ねぎやレタス、小松菜なんかを植えています。夏は家の野菜だけで足りてしまうほどなので、買い物も最低限で済み便利でもありますね。

 

ー働く世代だとこういった生活をしたいなと思ってもなかなか難しいというのはあります。平さんは仕事と暮らしの両立についてはどう考えていますか?

仕事と暮らしをわけるという感覚が、私も夫もあまりないのかもしれません。生きていくからにはもちろん仕事はしなきゃいけないんですが、それも含めた時間が自分の人生というか暮らしですよね。この暮らしと仕事というのは別のフレーズになることが多いと思うんですけど、本来暮らしの中に仕事って入っていますし、逆に仕事の中にも暮らしは入ってますよね。人生の大きな部分を仕事が占めるのであれば、それは「嬉しく」「楽しく」 ないといけない。お金をもらうためだけに割り切ってする仕事を一生続けることに、私は楽しさや嬉しさを持ち続けられないなと。家で仕事をするというイメージが昔からあり、常に暮らしの中に仕事が一体となっていて、どっちも妥協しないで楽しみたいという気持ちは強いのかもしれないですね。

 

日常の当たり前を大切に、そこに目を凝らせること

ー仕事の自分と家にいる自分をスイッチで切り替えている人も多いと思うんですけど、平さんの場合は切り替えながらも輪になっているというか・・仕事と暮らしが一体化した価値観がありますね。その中心にこの家がある。

家自体は私たちの1つの目標ではありましたけれど、普通にマンションの1LD K に住んでいた時からこの感覚 はあまり変わってはいなくて。暮らしを楽しみたいという思いはどの場所にいても変わらないですね。もちろん家自体は私たちにとってすごく大切なものなので、その家を充実させたい という思いはずっとありました。家を建ててやっと暮らしを更に楽しむスタート地点に立ったところではあるんですけれど、あくまで自然と進んできたことの ように思います。

仕事のインスピレーションが日々の暮らしから得ていることは間違いないのですが、そのインスピレーションのために何か積極的に行動をしてはいないので、日常に当たり前に起きていることを大切に目を凝らしてたいなと思っています。自分の暮らす環境を自分の理想に近づけることで、その当たり前の位置をちょっと引き上げたかった。こういう自然に近いところに住んでいると、都会の真ん中にいた時より暮らしからのインプットが増えたように思います。

 天井が高い家

 

ー理想を叶えるだけではなくて、理想をキープし続けることも難しいと思うのですが、そこに悩みやギャップが生まれることもありますか?

そうですよね。そういう時は一旦立ち止まって自分にとっての理想はなんだろうと考えます。そういう時ほど惰性 でこなしていたり、常識に囚われ実感が薄いことに気づくことが多いので。またイメージができない理想は叶わな いし、課題に気づいて いなければそのまま流されて終わってしまいます。「ここからどうすれば理想に近づくか」 ということがイメージさえできれば、自然とその方向に進むことが出来ると思っています。

 

ーまず自分の状況に気づいて、変えていきたいことは具体的にイメージをするということですよね。それが習慣化されているから、着実に前に進み続けているのかなと感じます。

⻑期的に捉えるとそうなのかもしれないですね。家も仕事も、困難な状況にあっても諦めなかったこと、頭の中で見ていた景色が叶うまで妥協しなかったから今この環境にあるのかなと、振り返るとそんな気がします。もちろん落ち込むことも多々有りますが、そういう時こそ未来にポジティブなイメージを持つことで、いかなることも良い方向に変えていくことができるという意識が強いのかもしれないです。ポジティブであることの重要性は年々強く感じていますね。

 心地のいい暮らし

 

 

ー最後にエソラニの1つのテーマである「つづきをつくる」ということについてお伺いします。平さんの暮らし中には「つづく」ことへの意識のようなものがあったりしますか?

サスティナブルな暮らしを特に意識しているわけではないのですが「この世界の全てはつながっている」 ということを本当に強く感じているので、そこは自分の全ての考えや行動の根底になっているのかなと思います。先ほどの仕事と暮らしとの関係とか、野菜を育てて食べるとか……日常の中に大切なことが潜んでいて、生きることの楽しさや有り難さが自然と意識の中に根付いているのかなと。 時間は毎日当たり前のように流れて、自分の未来へとずっとつづいていくわけですしね。何を考え選択していくかによって、今の自分が、未来の自分を 作るわけです。

ただいずれにしても、全て私がシンプルに好きでやっていることなので、自分に無理をしたり、それを人に押し付けることもしたくないし、中途半端にそういうものを語ることも好きではないです。それぞれの人の環境も違えば 幸せの形は違いますしね。そういうことを含めて、表も裏も全部を受け入れていきたいなと思っています。

 

 

ありがとうございました。次回はジュエリーデザイナーである平さんのワーク「ものづくり」や「デザイン」について詳しくお伺いする予定です。お楽しみに。

インテリアのヒント

 

 

 

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Ryui西荻窪

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